令和04年01月20日

コロナや生乳出荷抑制等不安の中で

登録・ゲノム情報利用で繁殖向上を

(一社)日本ホルスタイン登録協会 会長 前田勉

変異株感染が危惧
 明けましておめでとうございます。会員酪農家の皆様、登録委員並びに関係団体各位におかれましては、健やかに新春を迎えられたこととお慶び申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症は、中国・武漢市から全世界中に拡大して丸2年が過ぎました。その間、新型コロナワクチン接種の普及等によって感染者数も一時は減少傾向をたどりましたが、最近のオミクロン株の猛威によって欧米諸国を主体に感染者数は急速に増大し、米国では1日の新規感染者が100万人を超え、全世界での感染者数は累計で3億人に達しました。日本国内でも極小に留まっていた新規感染者数が今年に入って急増しており、今後の感染拡大が危惧される状況です。
牛乳消費促進対策が急がれる
 酪農関係では、昨年は生乳生産が好調に推移する一方で、コロナの影響や夏場の大雨・気温低下等によって牛乳・乳製品の需要が大幅に減少し、脱脂粉乳やバター在庫が依然高水準にあること、さらに年末年始の不需要期を迎えて処理不可能乳発生の懸念から、農水省をはじめ業界関係者による牛乳消費促進対策、生乳の出荷抑制や原料高騰に伴う飼料価格安定対策等、その対応が急がれるところです。
登録や審査は回復基調
 このような状況下で、当協会の登録事業は、コロナ禍の影響はなお大きいものの、昨年末の血統登録申込頭数は、低調だった前年を大きく上回ったほか、特に都府県における体型審査についても回復基調にあります。
 今なお、酪農家戸数が減少する中で、性選別精液の利用拡大等によって、ホルスタイン種雌牛頭数は漸増傾向にあり、登録頭数の増加につながっています。日本ホル協では本年も、より多くの後継牛を登録に結びつけるため、安価で申込書不要の自動登録を推進し、強い近親交配の回避や遺伝病の発現防止、遺伝的能力評価計算の基礎となる正しい血縁の構築と情報提供を行ってまいります。
 また、令和4年度には登録事業のほか、後代検定娘牛の体型調査、生産性や長命連産に関係した耐病性指数の開発と総合指数(NTP)や長命連産効果の見直し、搾乳ロボット適合性指数の開発等を実施していく予定です。
還元情報の拡充
 日本ホル協は令和2年秋に、家畜改良センター、家畜改良事業団、ジェネティクス北海道及び十勝家畜人工授精所の5団体から成る「乳用牛改良推進協議会」を設立し、わが国の乳用牛改良を円滑に推進するための調査と技術開発、普及啓発や情報発信するための活動を開始しました。
 その成果として、昨年8月の乳用種雄牛評価から「暑熱耐性」評価値の公表開始や本年2月評価からは在群能力を組み入れた新たなNTPが公表される予定です。
 また、日本ホル協では昨年8月から、SNPデータから推定可能な胚性致死関連形質(HH1〜HH5)の保因状況をWeb上で掲載開始しました。さらに、本年4月からは「自動登録同時SNP検査」の還元情報(都府県版)をグラフ化等の見やすい様式に変更するよう準備を進めています。血統情報とゲノミック評価値を利用して、より適正な交配種雄牛の選定と受胎率の向上にも貢献できるよう努力してまいります。
寅年は「ゆとりと決断」の年
 令和4年の干支は「壬寅(みずのえとら)」で、この干支の動物「虎」は、大きな身体と鋭い牙から「勇敢さや力強さ、溢れるほどの自信」が感じられます。「壬」は、ゆったりカーブを描きながら流れる大河を表しているそうです。加えて「決断」の意をもつ「寅」が合わさった2022年は、安定性と、心にゆとりを持ちながらもはっきりと決断できる年、おおらかに物事を見定めることができる年になることを期待しています。
 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症の再拡大が心配される状況ですが、皆様におかれては、引き続き感染予防対策を徹底され、体調管理には十分留意され、ご健勝でお仕事に精励されますよう、心よりご祈念申し上げます。

令和04年01月20日

コロナ禍の現状と

新たな情報提供


事業部 部長 國行将敏
感動と我慢の1年
 昨年、1年延期となった「東京オリンピック2020」が開催されました。無観客開催となりましたが、日本で開催したこと、アスリートたちの真剣勝負に感動した人も多かったと思います。一方、終息の見えない新型コロナウイルス。こんなに長く続くとは、誰も予想していなかったのではないでしょうか。感染者の増加のたびに私たちは行動制限を幾度となく受け、我慢をしなければなりませんでした。長く続いた緊急事態宣言も昨年9月末に解除されましたが、年末になり新たな変異株が増えてきて、不穏な年明けだったのではないかと思います。
個別、自動ともに増加
 日本ホル協では職員の新型コロナウイルス感染防止対策として、出勤人数を最大で半分以下に制限する対応をしておりました。そのため、事務作業が多い個別登録申込については、コロナ禍前と比較して、血統登録証明書を発行する時間が倍以上にかかってしまったことに対して、深くお詫び申し上げます。
 このなかで個別登録申込は令和3年12月末現在、前年同期比101.7%と増加で推移していますが、コロナ禍前の令和元年度同時期と比較すると1800件少ない状況です。一方、自動登録は前年同期比103.4%と、こちらも増加で推移しており、令和元年度同時期と比べて550件増えています。個別登録から自動登録に切り替わっている農家も増えてきていることも、この結果に繋がっているのではと推測しています。
審査は増加に
 牛群審査・体型調査については、令和2年度前期は緊急事態宣言の影響により、21府県のみの実施。令和元年度同期と比較すると、41.6%と少ない結果でした。令和3年度前期は38都府県で実施をして前年同期比286.7%となりました。コロナ禍ではありますが、改良の成果を見るための牛群審査の受検ならびに体型調査に対するご理解ご協力をいただいた結果と思われます。
 引き続き新型コロナウイルスの感染状況を注視しながら、支部承認団体の担当者と連絡をとって対応してまいります。
新たな情報の提供
 昨年の8月から、ハプロタイプの情報を提供することになりました。
 ハプロタイプとは、生物の染色体上の複数のSNPの組み合わせを指しています。遺伝子は両親から良い遺伝子を受け継ぐ反面、遺伝的疾患の原因となる遺伝子も引継ぎします。 
 今回提供された情報は、妊娠期間中に胚死滅をもたらすHH1からHH5の5種類の遺伝的不良形質で、これらはSNP検査である程度推測することができます。この遺伝的不良形質の有無を知ることで、繁殖による経済的損失を最小限に防ぐことができると考えています。泌乳は分娩してから始まるので、分娩しないことは生乳生産どころか、後継牛確保にも影響を及ぼします。
 このハプロタイプは、遺伝子型検査を行わなくてもSNP検査で推測できますが、SNP検査をするには血統登録が必要になります。また、SNP検査は遺伝的に優れているかを早期に見極めることができる技術であり、若い時期にSNP検査を実施することを推奨しています。
自動登録の普及推進
 日本ホル協では「自動登録同時SNP検査」を推進しております。これは自動登録で登録後、3か月以内にSNP検査をした牛について、血統登録料金の優遇をするものです。
 現在、SNP検査で得られた遺伝情報を数字だけではなく、グラフ等で見やすく、かつ分かり易く情報提供できるよう準備しております。これを機に個別申込みから自動登録に切り替えてみてはいかがでしょうか。
 皆様に素早く血統登録証明書をお届けするために日々努力しておりますが、個別登録申込みではどうしても調査に時間を要することになります。他方、自動登録は出生報告後スピーディーに血統登録することができます。日本ホル協では引き続き、自動登録の普及推進に努めてまいります。自動登録のことで何かご不明な点等ありましたら、日本ホル協に連絡ください。
 今後も血統登録の必要性に対する理解とその普及にご協力いただくよう、よろしくお願いします。

令和04年01月20日

高得点牛紹介


岩手県佐野牧場 ラツキー チエン


群馬県遠坂牧場 ヒーローズ ダツチ
泌乳にも優れたラツキー一族
 昨年12月の岩手県後期体型審査において、遠野市の佐野牧場所有の「プロスペリー ハーバート ラツキー チエン(平27.05.05、6歳5産、父:マツカチエン)」が、93点3Eに評価された。
 このラツキーチエン号は過去、4歳6月3産で92点、5歳7月4産で同92点を獲得しており、今回6歳6月で5産目を分娩し、93点の快挙となった。
 本牛は、同牧場で連綿と続く「ラツキー」一族で、母の「プロスペリー アドベント ラツキー ゴールド」が91点4Eなど別掲のとおり、極めて体型が良く、そのうえ泌乳能力の優れた系統である。5代前の「ドリームランチ ラツキー スター」が同県葛巻町の藤岡俊策さんから導入されており、佐野牧場で大きく開花している。
 初産85点、2産目89点と特筆すべき体型を呈しており、3産目で92点を得た後も順調。ただし、繁殖が順調過ぎることもあって、各種のショウや共進会にはほとんど無縁。
 一方、検定証明済みの泌乳成績をみると、初産から311日乳量が1万3284キロと高泌乳を示し、2産目332日1万5918キロ、3産目346日1万7142キロと続き、このたびの5産目もまだ泌乳前期であるが日量60キロ前後を泌乳中である。
 先般の体型審査での各部の配点は、体貌と骨格91点、肢蹄91点、乳用強健性94点、乳器94点(12月13日確認審査実施)。特に体型的特徴を挙げるならば、極めて正確なフレームを持ち、体長があり、姿勢は優美で頸は薄く長く、肋腹の開張に富み、乳房においては特に前乳房の付着が強く、後乳房は高さと幅が抜群という点であろう。5産目にして乳房底面が飛節端から8センチ以上も上に位置することから、今後の益々の活躍が期待される。

ラツキー チエンと祖先の泌乳成績


プロスペリー ハーバート ラツキー チエン
令和3年12月27日撮影 提供:デーリィマン社
都府県最高得点牛 リコ ダツチの娘牛
 同じく昨年12月、群馬県後期体型審査において、太田市の遠坂牧場所有の「フアイン ヒーローズ ダツチ(平27.6.27生、6歳5産、父:エルヒーローズ)」が、93点3Eに評価された。
 平成15年度後期に同牧場初となるEX牛が出て以来、令和3年度までの間で24頭と多くのEX牛を輩出している。その中でも本牛の母「フアイン リコ ダツチ」が平成28年度前期に94点、その翌年に95点を獲得し後にもEを更新している。また、「OK タイガー ウツズ ライオネル ET」が今年度前期に93点を獲得しており、これらに続きヒーローズは同牧場で3頭目となる高得点(93点以上)の快挙となった。
 本牛の審査記録は、初産84点、2産88点、3産90点、そして昨年12月(5歳5月・4産)の審査で92点を獲得し、この度の審査で自家生産牛2頭目の93点を格付けされた。各部の配点は体貌と骨格93点、肢蹄91点、乳用強健性94点、乳器93点(12月27日確認審査実施)。
 9月に5産目を分娩し、分娩後3か月経過した状態で、コンディションは良く、骨格構造は正確で前駆から中躯・後躯への移行に優れ、全体に伸びとゆとりのある体貌と骨格を備えている。また、全体に活力があり肋骨の間隔は広く後方によく開張し輪郭鮮明で、乳器においても前乳房の付着は強く、後乳房は幅広く高く付着しており乳房懸垂は強く、5産しているが乳房底面は高く、極めて機能的な乳器構造を備えている。
 なお、本牛は平成30年に開催された第19回関東地区ホルスタイン共進会に出場しており、インターミディエイト名誉賞を獲得。また、昨年コロナ禍の厳しい状況で開催された群馬県畜産共進会(乳牛の部)では最高位賞を獲得している。

フアイン ヒーローズ ダツチ
令和3年11月17日撮影 提供:デーリィマン社



一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan