令和03年01月20日

牛群一括リスト作成可能に

近交情報システムWeb
 令和2年9月に、近交情報システムWebに新しい機能が追加されたので、その機能についてご紹介します。
 そもそも近交情報システムWebとは、所有している雌牛(以後、在籍雌牛)と交配したい種雄牛(以後、供用種雄牛)を交配した時に生まれる牛の近交係数を表示するシステムです。どの種雄牛を交配すると近交係数が高くなってしまうのか、分かりやすく検索することを可能にしています。平成29年3月に運用が開始され、在籍雌牛と供用種雄牛との近交係数を1頭ずつ一覧表示するシステムとなっています。スマートフォンでも見やすいようなシンプルな設計となっているため、牛舎内で発情している雌牛を確認しながら交配したい種雄牛との近交係数を確認することができます。しかし、あくまで1頭ずつの表示であったため、今までは在籍雌牛全頭の情報が欲しい時などには1頭ずつ検索しなくてはなりませんでした。そこで、昨年9月に追加された新機能では、牛群内の在籍雌牛と供用種雄牛との近交係数を一括でリストアップすることが可能になりました。
新機能・牛群一括リストとは
 この機能は近交情報システムWebの項目「牛群一括リスト」を選択すると利用することができます。
 リストアップしていくうえで、細かい条件を付けることも可能です。例えば、平成30年10月より日ホ協では近交係数の上限値の目安を7.20%に設定していますが、リストでは指定した種雄牛との近交係数の上限値(または下限値)を自身で設定することができます。仮に交配を行った時に生まれる産子の近交係数や予想される近交退化量(NTP)などの表示項目を選択することもできます。また、リストに表示される牛の並び順も変更が効き、雌牛は拡大4桁、登録番号、生年月日から、種雄牛は略符号、総合指数、乳代効果、産子の近交係数、長命連産効果から並び替える条件を選択できます。このように、自身の経営方法や交配計画などから欲しい情報をまとめたリストを自分で臨機応変に作成することができます。

近交情報システムWeb画面


リスト表示条件一覧
リストの出力方法
 自分の見やすいようにカスタマイズしたリストは「リストを表示する」ボタンを押すと現在選択している条件でのリストが表示されます。もしこのリストを印刷したい際は「印刷用リスト」ボタンを押すと、A4サイズで印刷が可能です。このリストはエクセルで利用できるCSVファイルとしてデータをダウンロードすることも可能なので、データをさらに使いやすいレイアウトに編集してから印刷することができます。CSVファイルを保存したいときは「CSVファイルをダウンロードする」ボタンを押します。
 ただ、作成した牛群一括リストは在籍雌牛の頭数によっては膨大な情報量になることもありますので、スマートフォンではなくタブレットやパソコンでの閲覧を推奨します。また、同じ理由で多量のデータ通信が発生する可能性があるので、有料のモバイル通信ではなく、無料のWi−fiまたは有線による通信環境の上でご利用ください。
 遺伝的改良を進めていく上での近交係数の上昇は止むを得ないとはいえ、その上昇を緩やかにするためにも、今回新機能が導入された近交情報システムWebをご活用頂ければと思います。何かご不明な点等がございましたら、日ホ協までご連絡ください。

カスタマイズした牛群一括リストの例


近交情報システムWeb

令和03年01月20日

急激な増加は危険

近親交配と近交退化

 近交情報システムWebでは近交係数というものを表示しています。この近交係数は、ある個体のある遺伝子座における2つの遺伝子が、同じ祖先の同じ遺伝子である確率を表したものです。簡単に言うと、生まれる牛の祖先に共通した個体がどれだけいるかを表しています。近交係数が高いほど、同じ祖先の同じ遺伝子である確率は高くなり、共通の祖先は多くなります。例えば、おじ・めい交配での近交係数は6.25%となります。
近交退化が与える影響
 近交係数は年々上昇し続けています。1980年の都府県における平均近交係数は0.73%だったのに対し、2018年には6.78%までになりました(図1)。
 近交係数が上昇していくことは遺伝的改良を続けている以上避けることはできませんが、急激に上昇することは避けなければいけません。近交係数の急激な増加は体型の矮小化、繁殖能力の低下などの近交退化だけでなく、悪性劣性遺伝子のホモ化による牛コレステロール代謝異常症(CD)などの遺伝病発症率の増加などを引き起こします。
 このようなデメリットが数多く存在するため、近交係数には注意を払う必要があります。しかし、近交係数を下げるために能力の低い種雄牛を利用すると、改良速度が低下してしまう可能性があります。
 乳量を例として挙げますと、近交係数が1%上昇すると近交退化として305日乳量が27`減少してしまいます。例えば、乳量の育種価が+500`の母牛に育種価+2000`の種雄牛Aを交配した場合、その子牛の近交係数が7.20%となると仮定します。一方、同じ母牛に育種価+1000`の種雄牛Bを交配した場合は生まれる子牛の近交係数が3.60%と低くなる場合とを比較します(図2)。つまり、種雄牛Aは能力が高いが近交係数も高い牛であり、種雄牛Bは能力こそ劣りますが近交係数は低く、近交回避に繋がる牛となっています。子牛に期待される遺伝的能力は図の中に示されている計算式で表すことができ、種雄牛Aを交配した時は+556`、種雄牛Bを交配した時は+153`となり、Aと比較すると改良量がかなり低くなってしまいます。
より効率的な改良を
 交配計画を立てるときには遺伝的改良量と種雄牛との交配に伴う近交退化量を比較し、より改良速度が増加する方を選択する必要があります。そのためにはまず、生まれてくる子牛の近交係数を把握することが必須となります。

図1 ホルスタイン種雌牛の近交係数の推移


表 近交係数ごとの近交退化量


図2 子牛の期待される遺伝的能力の比較



一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan