令和03年01月20日

ホ種登録事業110年(その1)

明治から5つの時代経て今日へ

戦時中も途切れることなく連綿と
 わが国のホルスタイン種登録事業は明治44年の日本蘭牛協会創設によって始まり、本年8月で110年を迎える。今回から3回にわたって、登録事業創始からの主な歴史を振り返ってみたい。
オランダからの輸入牛を登録
 令和3年丑年、わが国のホルスタイン種登録事業が開始されてから110年を迎える。
 ホルスタインの登録は、明治44年の日本蘭牛協会創設に始まった。登録規程を制定し、血統、能力、体格、補助の4種類の登録を開始した。同年10月にはオランダから輸入された雄・雌牛を血統登録第1号としてそれぞれ登録した。
 登録事業はその後、大正4年に設立された中央畜産会に引き継がれ、昭和に入ると北海道の登録を統合した。第二次世界大戦の夥しい戦火の中でも登録業務は一度も中断されることなく、今日まで連綿と継承されてきた。

日本蘭牛協会の血統登録証明書
日ホ協創設と第1回全共
 昭和23年3月に農林省の指導のもと、乳用牛登録事業に関する全国大会が開催され、全国のホルスタイン生産者・所有者による民主的な登録団体として「日本ホルスタイン協会」を設立することが決議された。同年5月に社団法人として創設し、7月には「社団法人日本ホルスタイン登録協会」に名称変更し、8月からホルスタイン登録事業を開始した。翌24年には北海道支局を設置し、全国を一円とする日本ホルスタイン登録協会が発足することになった。
 戦後の産業復興政策として有畜農業が奨励され、酪農家戸数は5年間で13万戸から25万戸に、乳牛頭数も20万頭から35万頭に増大し、酪農は順調な発展を遂げた。
 こうした中で、日ホ協は26年3月に神奈川県平塚市で30道県から157頭の出品を得て第1回全日本ホルスタイン共進会(全共)を開催した。昭和天皇の行幸もあり、この時期の酪農発展に与えた影響は極めて大きかった。
純粋種の毛色と種系登録の整備
 乳牛頭数が急増する中で、当時はホルスタインと在来種牛との交雑による新乳牛生産が頻繁であったことから、日ホ協では登録規程の改正を行い、血統登録の毛色条件に厳格な拒否事項を制定した。これは純粋種の登録から回避するためであったが、その一方で29年には全国乳牛頭数の80%近くが無登録のまま放置されている状況を打開するために、ホ種系登録制度を導入し、その登録業務を地方関係団体に委託することになった。これが支部・承認団体設置の始まりである。
高度経済成長と改良増殖目標
 昭和30年代は高度経済成長期にふさわしく、酪農業界並びに登録事業においても明るい展望を見せ始めた時期だった。
 登録頭数でも31年の2万8千頭が35年には5万3千頭に倍増し、東京オリンピックが開かれた39年には初めて年間10万頭を突破した。この年、日ホ協は中野区の現在地に自社ビルを完成し移転した。
 また、31年には静岡市で第2回全共が開催され、そして、36年に長野県松本市で開催した第3回全共には上皇陛下(当時、皇太子殿下)ご夫妻がご台覧された。
 審査関係では、33年に体型審査標準の大幅な改正を行った。先進国アメリカに倣って、一般外貌、乳用牛の特質、体積、乳器の4大区分とし、体格の充実と乳用性を重視した内容に変更した。また、ホルスタイン種雌牛簡易体重推定尺を発売した。胸囲から体重を簡単に推定できることでその利用性は高いものであった。37年に国は、第1次家畜改良増殖目標を公表した。10年後の目標値は305日乳量5400`、乳脂率3.4%、SNF8.5%、体高135センチ、体重580`とし、泌乳能力の向上と体格の大型化を目指すうえで乳牛改良の重要性が公に示された時期であった。

第3回全共開会式には皇太子殿下(当時)ご夫妻が
ご台覧された(昭36、長野県松本市)
乳牛頭数が急増 府県も導入盛んに
 昭和40年代前半は日本経済が好況で酪農界も好景気を迎えた時期である。40〜46年の7年間で、酪農家戸数は38万戸から28万戸に激減したが、乳牛飼養頭数は138万頭から180万頭まで急激に増加した。登録頭数も46年にはこの年代のピークとなる年間17万頭を突破する等大きく伸びた。42年9月には明治44年の血統登録雌牛第1号から数えて100万頭目が誕生。「登録番号1000000」は兵庫県の牛だった。
 また都府県では乳牛の需要が増大し、乳牛の流通にも活気が出てきた。特に体型や泌乳能力の格付けとなる「高等登録」が急増した時期でもある。「何代連続高等登録」が乳牛の販売価格に大きく影響し、主産地である北海道や千葉県、静岡県、兵庫県などには他県からの購買者が頻繁に往来する状況が続いた。
後代検定と血液型検査の義務付け
 昭和40年代後半は登録頭数の安定期を迎えた。家畜改良事業団の設立と広域種雄牛センターが設置され、凍結精液の普及率もその10年間で3%から95%へと飛躍的な普及を遂げた。また、国や家畜改良事業団による乳用種雄牛の後代検定事業が開始され、より精度の高い後代検定成績によって種雄牛を選抜する時代に入った。
 日ホ協では39年に血液型検査をスタートし、改良上で大きな影響力を持つ雄牛について血統登録の際に血液型検査を義務付けた。血液型検査業務は53年に検査体制の拡充等を機に、家畜改良事業団に移管された。
 普及事業では、46年にアメリカ・カナダホルスタイン改良研修をスタートし、平成12年までの29年間の長きにわたって、先進国の改良の動向や酪農家訪問、アメリカ・カナダの2大共進会の視察等の研修の機会を提供した。また、48年には全国酪農協会が発行する全酪新報を通じて、年4回の日ホ協特集号を会員や登録委員ほか関係者に直送し、登録の普及や改良情報を今日まで提供している。
 (3月20日号に続く)

令和03年01月20日

コロナ禍の蔓延する中で

登録・審査への協力に感謝

(一社)日本ホルスタイン登録協会 会長 前田 勉

重大ニュースもコロナ禍が独占
 明けましておめでとうございます。会員酪農家の皆様をはじめ、登録委員並びに関係団体各位におかれましては、健やかに令和3年の新春を迎えられたこととお慶び申し上げます。
 昨年は、新型コロナウイルス感染症に翻弄された1年でした。昨年末に発表された2020年国内重大ニュースでもトップは「新型コロナ感染拡大で緊急事態宣言発令」で、2位以下もその関連で「東京五輪・パラリンピック延期」、「新型コロナで政府が全国小中高の休校要請」、「志村けん氏死去」、「高校野球が春夏中止、プロスポーツ界でも延期や中止相次ぐ」等が入っており、コロナ禍の脅威を物語っています。
 酪農業界でもコロナ禍で需給は大混乱しましたが、それでも「生乳廃棄はゼロ」、「学乳異例の3か月休止も官民挙げて支援広がる」が1、2位を占め、この窮地で酪農関係者の底力を見せた感がありました。
登録や審査にも大きく影響
 コロナ禍は、当協会事業にも大きな打撃を与えました。
 昨年10月末に九州で開催予定であった第15回全日本ホルスタイン共進会も開催中止の苦渋の決断を致しました。また、通常総会も1か月延期したうえで書面決議に変更したほか、夏期の研修会も中止、役員会等も書面又はウェブ開催を余儀なくされる等、当協会の設立以来、例を見ない苦難の1年となりました。
 その中で血統登録では、登録委員が現場に出向いて申込書を作成し、各都府県支部・承認団体を経由して行う個別登録の減少は顕著でしたが、会員酪農家自らが牛群検定繁殖報告や当協会ウェブサイト等で授精報告を入力送信していただく自動登録では、概ね前年どおりの件数が得られました。
 一方、都府県の前期体型審査では、4月の緊急事態宣言が全都道府県を対象として発出されたこともあって、半数以上の都府県で審査が中止され、前年度対比30%に満たない大幅な減少となりました。後期については、コロナ禍の影響がなお続く状況下で、各都府県では防疫強化と受検酪農家のご協力に支えられながら実施し、審査頭数もやや回復の兆しが見えたところです。この状況下にあって、登録や審査等の推進にご協力いただいた皆様に感謝申し上げる次第です。
 年明け早々に1都3県に対して緊急事態宣言が発出されました。年度末の登録証明書交付や審査等実施面にも影響があるかと思われますので予めご了承願います。
自動登録とゲノミック推進
 近年は、酪農家戸数が減少する一方で乳用雌牛頭数は増加傾向に転じ、特に後継牛確保のための性選別精液の利用拡大によって、雌子牛頭数が子牛生産の半数以上を占めるようになりました。血統登録においても性選別精液による生産雌子牛の登録割合が全体の3割以上を占め、登録頭数の増加につながっています。
 当協会では本年度も、より多くの後継牛を登録に結びつけるため、安価で申込書不要の自動登録を推進し、強い近親交配の回避や遺伝病の発現防止、遺伝的能力評価計算の基礎となる正しい血縁の構築と情報提供を行ってまいります。
 また、育成牛の早期選抜や交配種雄牛選定に有効なゲノミック評価値の普及を図るため、自動登録農家を対象に「自動登録同時SNP検査申込」を行い、本申込では当該牛の血統登録料の半額還元のメリットを付加して、一層の推進に努めます。
丑年は「我慢、発展の前触れ」の年
 令和3年の干支は「辛丑(かのとうし)」で、この干支の動物「牛」は、古くから酪農や農業に使われ、人間を助けてくれた大切な生きものであり、特に私たち酪農家にとってはまさに生活の糧です。牛は粘り強さと誠実の象徴であり、丑年は「我慢(耐える)」、「これから発展する前触れ(芽が出る)」の年になると言われています。
 本年も、年明け早々に1都2府8県に緊急事態宣言が発出されました。皆様方には引き続き、マスク着用と手洗い厳守、「三密」を避ける等の最善の防御対策を心がけていただき、ご健勝でお仕事に精励されますよう、心よりご祈念申し上げます。 

令和03年01月20日

ニューノーマルな時代へ

自動登録の普及推進を
未曽有の一年
 昨年、私たちは新たな見えない敵に振り回された年を経験しました。新型コロナウイルス感染症。感染拡大を防止するために我が国で初めて緊急事態宣言が発出され、人の移動制限や学校の休校など、今まで当たり前にできた行動が、この見えない敵により自由を奪われてしまいました。日ホ協の関係で言えば、昨年秋に開催する予定であった第15回全日本ホルスタイン共進会が中止になったことが大きな出来事でした。
 また、体型審査については、県から県への移動自粛等に伴い、緊急事態宣言中には審査を中止するという事態になりました。酪農家の皆様の関係では、検定員や登録委員が農家に出向けないといったところもあったと思います。
改良は止められない
 今回の新型コロナウイルス感染症により、人の行動は制限され経済は停滞してしまいました。しかし、牛の繁殖は止められません。繁殖を止めてしまえば空胎日数ばかりが増えてしまい、生乳生産や後継牛確保に影響が出ることは言うまでもありません。
 子牛が生まれ新たな泌乳が始まりますが、子牛を産むためには繁殖が必要になります。繁殖はただ牛を作るだけはなく、より良い牛を作出するため、言わば「改良」することが目的だと思います。その改良に必要なのは血統情報と泌乳能力、体型だと思いますが、血統が分からない雌牛に能力の高い種雄牛を交配したとき、偶然にも似かよった血統を交配してしまい、近交係数の上昇により、かえって能力を下げてしまうことも考えられます。
血統登録を止めるな
 コロナ禍の中、令和2年12月現在、個別申込みによる血統登録は前年度対比84.6%と落ち込んでいますが、自動登録については前年度対比98.9%で推移しています。個別申込みは登録委員が農家に出向いて申込書を作成することから、今回の人の行動制限が多少でも影響が出ているのではと思います。しかしながら、自動登録については出生報告と同時に血統登録されることから、今回は影響が少ないと思われます。
これを機に自動登録へ
 自動登録は年々増えてきている一方、何らかの理由で自動登録ができず、登録委員が血統登録申込みを作成しなければいけない農家さんもいます。登録委員の仕事は血統登録の申込みを作成するだけではなく、農家さんへの指導やコミュニケーションをとる役割も重要であると思います。
 しかし、この制限された行動が何時まで続くか分からない現在、確実にかつ迅速に血統登録できるのが自動登録です。感染拡大防止のために行動制限が出たとしても、出生報告した時点で血統登録申込みができるのも自動登録の利点です。これを機に自動登録に関心を持っていただければと思います。
自動登録を増やす
 私たちはこの見えない敵により、今までになかった新しい生活様式の変換時期を迎えています。メディア等では「ニューノーマル,新常態」と言うようですが、感染を防ぐためのソーシャルディスタンス、在宅リモートワークなど。当たり前にできていたことができない現在、それに合わせた行動が必要とされています。
 このような状況ではありますが、日ホ協では引き続き、自動登録の普及推進に努めてまいります。
 今後も血統登録の必要性に対する理解とその普及にご協力いただくよう、よろしくお願いします。
(事業部長・國行)

令和03年01月20日

訃報
 日ホ協監事の安齋利勝氏は今月9日急逝された。安齋氏は福島県酪農業協同組合の理事、副組合長を歴任し、平成27年9月に日ホ協の理事に就任し、昨年7月から監事を務めていた。享年69歳。



一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan