令和02年01月20日

長命連産性に優れた牛群へ

体型審査を受検しよう

事業部審査課長 高橋 貞光

 酪農経営を行う上で、乳牛に第一に求められるものは泌乳能力であり、乳牛の本当の価値はその牛が一生涯にどの位の牛乳を生産したかによって決まります。生涯生産能力をより一層高めていくことが生産コスト低減と収益性の向上につながります。
@ 審査の意義
 長い期間にわたって高い泌乳能力を維持するには、健康で骨格のしっかりした体型と付着・形状のよい乳房、丈夫な肢蹄等が必要で、これらは飼養管理や搾乳管理の作業効率を高める上でも重要な役割を担っています。また、体型の良い牛が数多く揃うことで、日常の管理作業の効率化が図られ、故障や疾病に対する抵抗性が向上し、結果的にトラブルが減り維持管理費の低減にもつながります。
 体型は必ず生産性や強健性などの機能を伴うものであり、外見上に表れるそれらの機能を早期かつ的確に見定めることが体型審査であり、その牛が生涯にわたって高い泌乳能力を発揮できるか否かを判定する重要な手法です。
A ツルータイプ
 「図1」に示したのは、我が国のツルータイプ(ホルスタイン種雌牛標準体型)です。ひとことにツルータイプと言っても、ただ絵画的に作成されたものではなく、想定された条件があります。その一部を例として挙げると@鋭角的で飼料の利用性に優れている、A6歳で4〜5産しているなどがあり、これは酪農家が経済行為を営むうえで、飼養管理する牛に重要な役割があることを示しております。例えば、ある酪農家の牛舎には初産から5産以上の牛が揃っているのに対し、一方の酪農家の牛舎には初産と2産の牛しかいなかった場合、酪農経営として理想的なのは前者であることは言うまでもありません。機能的で長命連産性に優れてこそ、経済動物としての価値は向上します。このことから、ツルータイプに想定された条件は酪農経営においても極めて重要な役割を担うものであります。
B 審査プログラム
 雌牛が審査を受ける場合には、血統登録牛であることを前提として、次の2つの審査プログラムにより受けることができます。@牛群審査(有料)として、飼養する牛群内の経産牛全頭を対象とするものと、A後代検定材料娘牛(初産検定中)を飼養している牛群検定農家において実施する初産牛の体型調査(無料)です。また、体型調査と同時に2産以上の経産牛の審査を希望する場合、6頭までは牛群奨励審査、7頭以上の場合は牛群審査として受検することが可能です。
 これらの審査日程は、4月から7月までの前期と10月から2月までの後期の年2回、日本ホル協の審査委員が現地の担当者とともに県内を巡回して実施します。審査では、各個体の体型について線形評価と得点評価を行い、審査終了後にその場で審査結果を印刷して説明を行うほか、直近の遺伝情報や種雄牛情報の説明や交配・管理等のアドバイスを行います。また、審査結果は自動的に審査成績証明されるとともに、血統・能力のデータと合わせて種雄牛および雌牛の遺伝評価に利用され、遺伝情報として酪農家にフィードバックされます。
C 審査結果から見えるもの
 「表1」には例として実際の審査結果を示しました。この結果から窺えるものとして、「牛群の成績」から過去の受検年月と受検頭数、それぞれ審査時の初産牛の平均得点が記載されています。今回の2歳級以下の審査結果を過去数回の結果と比較することで、今回の平均得点が向上したことが分かります。仮に同一環境下で哺育・育成されたのであれば、今回の18頭が過去3回より優れており、体型偏差値が上がったことは、結果として体型の改良や牛群管理が順調であったと推察することができます。次に、「個体別審査成績の概要」には、今回受検した18頭それぞれの個体情報と各形質・決定得点が記載されています。この結果からは乳器得点に上下のバラツキがあることが分かります。仮に繋ぎ牛舎であれば列ごとの搾乳担当者の違いや搾乳手順、搾乳機器など様々な理由が推測できます。また、決定得点81点の4頭に注目すると、同じ決定得点でも牛コード0008だけ乳器得点が80点以下の評価を受けているほか、乳器得点が77点以下の牛に注目することで改めて他の牛と搾乳性の良否を比較できるほか、今後の乳器改良への課題と後継牛の選抜・確保の対策としても利用できます。
D 線形形質
 「表2」には今回審査における線形形質の結果を示しました。ここでは特に◎と▼に注目します。この表を横に見ると個体ごとの特徴を線形形質ごとに把握することができ、縦に見ると18頭を一群として線形形質ごとの特徴を把握することができます。よって、表を横に見てbQやbP2のように◎が多い個体ほど、ツルータイプにある6歳で4〜5産するために必要な機能的体型を2歳初産として備るべき体型を他の牛よりも備えていると言えます。また、横に見てbXのように▼が多い個体は、他の牛よりも肢蹄と乳器において劣っていることが分かります。手のかかる個体を減らし、より◎が多い個体を集団にすることは管理作業を向上させ、故障や疾病に対する抵抗性に期待できることから、選抜淘汰の材料として有効に活用することができます。
 次に、表を縦に見て◎が多い形質、例えば「胸の幅」や「鋭角性」、「坐骨幅」、「後乳房の高さ」は、群として優れていることを示す一方で、◎がなく▼が多い「後肢側望」や「後肢後望」では群として好ましくない形質の特徴が表れています。例えば繋ぎ牛舎の場合は、牛のサイズに対する牛床の長さや幅の問題、マセン棒の位置や高さなど管理上の影響によるものと推測できると同時に、一つの飼養管理改善のきっかけとして役立てることができます。
E 遺伝評価
 牛群審査や体型調査では、単に体型の評価を行うだけでなく予め準備した受検農家ごとの遺伝評価値に基づき、審査委員が牛群の特徴や個体の情報について説明を行います。「表3」には、例として個体遺伝能力を示しました。総合指数NTPは、牛群検定記録と体型審査記録により評価が行われるので、この表でNTPの記載がないものは、評価時に審査記録を持っていなかったため、牛群検定による泌乳能力のみ遺伝評価が行われたことになります。この表では主に後継牛確保に向けた選抜淘汰の材料として、個体ごとの成績を確認することができます。例えば同一産次である牛コード「0009」はNTP+1152で期待乳量+432sに対して、牛コード「0005」はNTP-571で期待乳量-390sであることが分かります。このことから、同一環境下で飼養管理していても1乳期で期待乳量に800s強の差が生じることが推測され、これらは後継牛を確保するうえで極めて重要な情報であります。
F体型審査を受検しよう
 このようなことから、牛群検定の実施と共に牛群審査や体型調査を定期的に実施することで、牛群水準を確認することができるのは勿論のこと、飼養管理や個体販売、更には遺伝改良を有利に進めることができます。審査を受ける場合は、審査プログラムで説明したとおり原則として飼養する登録経産牛全頭を対象としますが、5歳以上や廃用予定、疾病牛等は除くことができるので、改良をより効率的に進めることができます。また、後代検定精液を利用することで、材料娘牛と同期牛の体型調査を無料で行うことができます。
 乳牛の改良を進めるうえで、血統登録・牛群検定・後代検定・ゲノミック評価等は、周期的かつ一体的で必要不可欠な極めて重要なものであります。これら事業に積極的に取り組むことが、将来の生涯生産性に優れた牛群、すなわち収益性の高い酪農経営を確立するためのツールであります。是非とも牛群審査の受検をご検討下さるよう宜しくお願いいたします。

 日本ホル協の審査委員が皆様の牛舎にお伺いします。
  • 國行 将敏(事業部長)
  • 高橋 貞光(事業部審査課長)
  • 椛沢 洋二(事業部審査課長代理)
  • 大西 信雄(契約)
  • 植原 友一郎(契約)
  • 池田 泰男(全共対策室長・宮崎県出向中)


図1 ホルスタイン種雄牛標準体型
(昭和54年制定)

 
表1 審査成績報告(決定得点および各部位得率)

表2 審査成績報告書(線形形質)

 
 
表3 個体遺伝能力


令和02年01月20日

全共を写真で振り返る9






一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan