令和02年01月20日

カナダ酪農視察報告記

(一社)日本ホルスタイン登録協会  塩野 雅一

 2019年11月4日〜10日までの7日間、デーリィマン社と北海道ホルスタイン農協が企画した「カナダ ホルスタイン酪農とロイヤル・ウィンター・フェア視察研修」に参加しましたので、その概要を報告します。
 このツアーの参加者は北海道在住の酪農関係者を中心とした総勢33名で、例年に比べると多い参加者数とのことです。
ブロンディン牧場
 現在のブロンディン兄弟で8代目。200年前に入植し、父の代より登録牛を飼い始め、現在は250頭程度を飼養(うち10%がRED牛。EX牛40頭)。飼料作付面積は400haで、内訳は乾草、コーンを35%ずつ、輸出(主にアジア)向けに大豆を30%作付。育成500頭を飼養し、95%にゲノミックサイアを授精、5%に受精卵を移植し、授精させる精液の選定基準・ポイントは、@バランス、A乳器、B尻幅、C肢蹄の4点とのこと。305日の平均乳量1万s、F%4.7%,P%3.5%の高能力牛群で、生体販売を盛んに行っているため搾乳牛の60%を初妊牛が占めていますが、肋の開張および方向、深さは凄まじく、見るからに良く食い込んでいることが窺えました。飼養形態はフリーストールであり、特筆すべき点として牛床に砂(自分の飼料畑から採取できるので無料。質は粒子が細かく、レンガを粉にしたような感じ)を使用し、雑菌の繁殖が抑えられるなど衛生的で牛が快適とのこと。実際、ベッドに寝ている牛が多かったことが印象的でした。
バルビゾン牧場
 牧場主のエリス・ジャンドロン女史はホルスタイン・カナダの副会長。飼養形態はつなぎ・対尻式で経産牛頭数65頭を飼養(EX牛1頭、VG牛35頭)、平均乳量1万2000s、F%4.3%、P%3.4%の高能力牛群。飼料作付面積は160haでアルファルファなどのマメ科を栽培しており、うち輸出用に大豆を40ha作付し、販売金額で乾草を購入しています。バルビゾンと言えば真っ先に思い浮かぶのは“ドアマン”ですが、研修参加者の殆どが目を奪われたものは「つなぎ牛舎用搾乳ロボット(MilkoMax社)」でした。価格は1台あたり4〜5千万円(現地価格)で、搾乳所要時間は1頭あたり7〜8分程度、機械に指示を入力すると乳房炎罹患牛の搾乳をパスしたり、盲乳牛は乳頭3本だけ搾乳することが可能です。バルビゾン牧場では3年前に導入して現在3回搾乳を実施しています。ちなみに120頭牛舎だと1日2.5回程度の搾乳となるそうです。日本ホル協では今年度後期よりロボット調査事業が開始され、線形項目に「寛幅」および「乳房底面の高さ」が追加となりましたので、非常にタイムリーな内容でした。なお、日本国内でも北海道の酪農家が試験導入しているとのことです。つなぎ牛舎用搾乳ロボットに興味がある方は「つなぎ牛舎 ロボット」でWeb検索すると、色々な情報が見られますので参考までにお知らせします。
ジレット牧場
 現在のエリック・パッド氏で5代目。3代目の歯科医師だった祖父が牧場を大きくし、ジレット牧場の名称はその祖父が由来とのこと。飼養形態はつなぎ・対頭&対尻式の他、フリーバーンで経産牛のべ650頭(ホル120頭、雑種430頭、採卵用100頭)を飼養、平均乳量1万500s、F%4.3%、P%3.6%の高能力牛群。飼料作付面積は520haでデントコーンを栽培しており、乾草は購入で賄っています。かつてジレット牧場には生涯乳量24万7711sのギネス記録所有牛(ジレット E スマーフ号)がいましたが、ここ数年はショウに出品しておらず、サイズが大きくなくて高能力な牛の産出を目指しているそうです。とは言え、在牧牛は全体的にフレーム、産乳量ともに大きい牛が多く、中でも十字部高177.5pのモンスター級の牛(体審91点)や、1日あたり84sを産乳するスーパーカウ(体審92点)がいたことが印象的でした。
サミットホルム牧場
 1938年に祖父がチェコスロバキアから難民としてカナダに入植。本人は大学卒業後、トロントで3年間の民間勤務を経て現在3代目として就農し、父、叔父とともにマネージメントを行っています。飼養形態はフリーストールで経産牛頭数490頭、初産平均乳量1万2000s、3産平均乳量1万4000s(305日)、F%4.0%、P%3.2%の高能力牛群。飼料作付面積は344haでデントコーンを栽培。乾草は購入で賄っており、自給飼料を全量外部委託することで省力化を徹底しているとのこと。観察眼を養うことが大事であり、毎年分娩させることが良い牛を育てるコツとのことで、平均分娩間隔12か月、授精回数2・3回を実現しています。また、スタンチョンの手前にゴムマットを幅60〜70p位敷くことで肢蹄のトラブルを減らしたり、鳥が牛舎に留まれないような構造にすることで飼料へのフン害を無くすなど随所に創意工夫が見られました。ブロンディン牧場でも使用している牛床への砂のアイデアは、通訳のテリー鈴木氏曰く「サミットホルム牧場が元祖」で、購入に年間16万カナダドル(約1300万円)も費やしているとのことですが、平均体細胞数は12万個と乳質は高品質で費用対効果は抜群とのこと。毎年、近隣住民や親戚、関係者などを集めて千人規模の牧場パーティーを催して交流を深めたり、飼養管理などでトラブルがあれば牧場スタッフや家族皆で話し合い原因を追究・解決していくという非常に前向きな考え方が印象的でした。

 
小雪舞うナイアガラ瀑布をバックに集合写真
酪農家視察とロイヤルの合間にて
 

バルビゾン牧場
つなぎ牛舎用搾乳ロボット
 

サミットホルム牧場
牛舎は梁に鳥がとまらないよう梁を無くした構造

令和02年01月20日

ロイヤルウィンターフェア

チャンピオン牛を間近で視察


 トロント市内の住宅街から少し離れたところに突如現れるメッセ会場がショウの会場であるエネケアセンターです。ロイヤル・ウィンター・フェアは、11/1〜10の10日間にわたり開催される農業の祭典で、乳牛だけでなく馬事競技や鳥豚めん羊など多岐にわたっており、目的である乳牛部門は11/7〜9の3日間開催されました。我々一行が会場入りした時には残念ながらレッド・アンド・ホワイトショウは終了していたため、繋留場の見学がメインとなりました。繋留場は驚きの連続でしたが、小学校の見学や一般見学者が気軽に話しかけたりできる雰囲気を作られ、誰でも容易に立ち入れることに先ず驚かされました。繋留されている出品牛はとにかくフレームが大きいの一言に尽き、繋留場の牛だけでなくその場にいる関係者全体のサイズが大きいため違和感を感じませんが、近くで見ると十字部高160cmを優に超えるサイズの牛ばかりでした。また、胸幅、肋の開張・方向共に凄まじく、ものすごい勢いで乾草を食べており、その健啖ぶりにもただただ感嘆の声が出るのみでした。
 翌日は、前日のショウの進行が遅れたとのことで運良く未経産第4部から見ることが出来ました。初めて入る会場には、天井中央にNBAでよく見る4面のスクリーンがあり、会場を暗くしてからのスポットライトなど、一つのエンターテインメントとして形作られていて非常に興奮しました。会場の都合上、リングサイドではなく上から見るため高さなどは分かりづらい(リードマンも大柄ということもありますが…)が、それでもフレーム、胸幅、肋の開張・方向、尻、肢蹄はとても素晴らしく、乳房を付けたらそのまま経産の部になるかのようなレベルでした。また、経産の部は、肋の開張・方向などは言うまでもなく、どの出品牛もとにかく乳房の付着・高さ・幅、そして乳房底面の高さが素晴らしかったです。プレゼンターの関係で牛の待機場に入る機会を頂きましたが、前日の繋留場から更にグレードアップした牛、中でも今年のワールド・デイリー・エキスポでリザーブ・インターミディエイト・チャンピオンを獲得したジェイコブス・ドアマン・ビクトア号(このショウではチャンピオンを獲得)を間近で見ることができ、その全てに圧倒されました。
 プレゼンターとして、リザーブ・インターミディエイト・チャンピオンの褒賞授与と写真撮影を行いました。受賞牛であるミズ・ビューティ・ブラック・ベルベット号はチャンピオンと同じ第12部で争ったこともありリードマンは相当悔しそうでしたが、栄えある成績を称え「コングラチュレーション」と言ったところ、もの凄く不満そうに「サンキュー」と返され、気まずい雰囲気の中での写真撮影になってしまいました。塩野雅一、一世一代の棒立ちです……。
 今回、視察研修に参加し英語の重要性を再認識したほか、農場視察では乳牛の体型改良・飼養管理だけでなく、カナダの酪農保護政策であるクォータ制度を知ることができ、ロイヤルウィンターフェアでは、素晴らしい牛達、会場の雰囲気、エンターテインメント性など実際に会場に行かなければ味わえない貴重な経験を得ることができました。この研修で見たことや感じたことを胸に刻み、日本の飼養環境に見合った牛達を正確に審査できる審査委員になれるよう一層努力していかなければならないと改めて感じました。
 写真はデーリィマン社より提供。
  

大迫力のショウ会場はカナダの国技である
アイスホッケー場を利用
  

Rインターミディエイトチャンピオン


令和02年01月20日

第15回全共対策室

第四回 全共通信


全共対策室長 池田 泰男

 新年あけましておめでとうございます。2020年を迎え、第15回全共の開催まで300日を切った1月8日、宮崎神宮(日本の初代天皇である神武天皇を祀る神社)に実行委員会並びに関係者で全共の成功祈願を執り行いました。いよいよと言った感じで、身が締まる思いです。
 さて、今回は繋留所について、少しお伝えします。全て決定事項ではなく、現段階での進捗状況となります。会場となる都城地域家畜市場には、既存の繋留所@がありますが、全国各地から270頭が集まり、約1週間繋留するには少し狭い。ゆったりと休み、本番を迎えていただくため、隣接の倉庫に仮設で繋留所Aを設置いたします。
 既存の繋留所@では一部狭い繋留所があり、昨年の九連共(プレ大会)の反省会で、使いづらいといった意見があったことから、その1列分を仮設繋留所Aに増設することで計画変更。よって、@には110頭、Aには160頭繋留予定。
 また、荷物等を置く場所を繋留所の後ろに確保しました。繋留所@では牛1頭当り3m×1.5mを繋留スペースとし、後方に2mの通路を確保、その後ろに奥行6m×幅1.5mの荷物置き場を提供します。
 また、繋留所Aでは、牛1頭当り2.5m×1.5mを繋留スペースとし、後方に1.5mの通路を確保、その後ろに奥行4m×幅1.5mの荷物置き場を提供します。
 2つの繋留所には多少違いがあり、既存と仮設、使い勝手は一長一短あります。しかし、限られた敷地での対応なので、ご理解願います。
 この他に、近年毛刈用の枠場の持込が多いことから、枠場の置場を各都道府県ごとに設ける予定です。
 今回は繋留所についてお伝えしましたが、宮崎神宮参拝の同日、沖縄県で豚コレラの発生が報じられました。他人事では無く、「入れない出さない」の精神で消毒の徹底をお願いします。


審査会場と繋留所




 


一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan