平成31年01月20日

カナダ酪農視察報告記

(一社)日本ホルスタイン登録協会  岡 太郎

 2017年11月5日〜11日までの7日間、デーリィマン社と北海道ホルスタイン農協が企画した、「カナダ・ホルスタイン酪農とロイヤル・ウィンターフェア視察」に参加しましたので、印象に残ったことや思い出を紹介します。
 このツアーの参加者は北海道在住の関係者を中心に24名、都府県からの参加者は家畜改良事業団の職員3名と私の4名だけでした。
 羽田空港を18時に飛び立ち日付変更線を跨ぎ10数時間後、カナダの最大の都市であり、ロイヤルの会場でもあるトロントに到着しました。数時間、空港で乗り継ぎ便を待ち、今度は国内線で約1時間移動しケベック空港へ。空港からはチャーターバスで移動しホテルにチェックインしたのは24時を回っていました。
 ケベック州は東海岸に位置し、世界遺産にも登録された旧市街の景観で知られています。カナダでは多くの州が英語を公用語とし一部の州が英語とフランス語を公用語としていますが、ケベック州はカナダ国内で唯一、フランス語のみを公用語に定めている珍しい州です。
酪農家3戸を視察
 ケベック州で2戸、オンタリオ州で1戸のそれぞれ特色のある優れた酪農家を視察しました。
タイディ牧場
 ケベック州で1軒目に訪れた牧場は7年前に牧場を買い取り開設された新しい牧場でした。牧場主とグアテマラ人、そして北海道美瑛町からの実習生の3名で管理。とりわけ日本からの実習生はよく働き、2人分働いてくれるそうです。現在の飼養頭数は220頭で搾乳牛は100頭、牛群の平均能力は乳量1万`、脂肪率4.6%、タンパク質率3.7%と高い乳成分が特徴です。高成分のおかげでカナダの平均乳価が72セント/Lであるのに対し、本牧場の販売乳価は80セントだそうです。交配は体型面ではバランスを重視し、高乳量より高成分の方がイージーな経営に繋がるという考えのもと一部の優れたファミリーのみに繁殖を行い、残りは全て受精卵移植を行っています。交配種雄牛はヤングサイヤーの利用は少なく検定済み種雄牛を多く利用し、中でもユニックスが多いとのことでした。また、個体販売にも力を入れており年間400頭を売却しているそうです。
ジェイコブス牧場
 2軒目に訪問した牧場は1軒目の牧場と隣接するジェイコブス牧場です。本牧場の歴史は祖父がオランダから1965年に入植したことから始まり、3代続いています。現在は父と妹との共同経営で飼養頭数は700頭、搾乳牛は225頭です。牛群の平均能力は乳量1万1500`、脂肪率4.5%、タンパク質率3.3%。体型面でも優れておりEX50頭、VG130頭と圧巻です。飼料は購入ではなく、全て自家産で隣のタイディ牧場と共同で行っているそうです。交配はヤングサイヤーと検定済み種雄牛の割合が半々でユニックス、ロートラスを多く利用しています。これまでは体型重視でしたが、生産性に重きを置いた改良に変換したそうです。
 後ほど紹介するロイヤルでも大活躍するジェイコブス牧場のエントランスでは歴代の名牛たちの写真や彼女たちが獲得したタイトルの盾や旗が温かいコーヒーと共に我々を迎えてくれました。
サミットホルム牧場
 3軒目に訪れた牧場はオンタリオ州にあるサミットホルム牧場です。本牧場は20年前に建設されたカナダのモデル牧場で毎年訪問させてもらっているそうです。飼養頭数は1000頭、搾乳牛は490頭です。牛群の平均能力は乳量1万3400`、脂肪率3.8%、タンパク質率3.1%と高泌乳牛群で日乳量は平均42`。また、長命連産性にも優れており、平均産次は4.2産、牛群の54%以上の牛が5産以上で生涯乳量10万`突破牛は25頭も在籍しているそうです。繁殖は全て自家授精で行い、未経産牛には性判別精液を利用しています。23ヶ月齢での初産分娩を目指し、分娩後、60日で人工授精を始め、繁殖が悪い下位25%の個体には肉用種の精液を利用しています。性判別精液の利用が多いため、肉用種を授精しても後継牛の確保は容易とのことでした。多くの子牛はヌレ子で販売しており、売却価格はホルスタインの雌牛が100ドルでF1が200ドルと日本とは比べ物にならないくらい安価でした。日本の取引価格を伝えると大変驚いており、「これからは日本に売りたい!!」と興奮気味に話していたことが印象的でした。
 カナダのモデルにもなっている牛舎はフリーストール牛舎で敷料に砂を利用しています。牛舎は少し傾斜していて糞尿が溝に流れる仕組みになっており、常にスクレーパーが可動することによって糞尿が少ない清潔な状態を保っています。また、牛舎には梁がなく、鳥が留まれない構造になっていました。大規模な土地を有しデントコーンと牧草を自給していますが、その作業は全て外部委託のカスタムワーカーに委託しているそうです。その理由としては畑に割く時間を省略することで牛舎作業に専念できるからとのことでした。農耕器具は一つも所有していないとのことでとても驚かされました。
 
ナイアガラの滝をバックに集合写真
酪農家視察とロイヤルの合間にて


ジェイコブス牧場


サミットホルム牧場
壁はなく気温によってカーテンが自動的に開閉

平成31年01月20日

圧巻の迫力

ロイヤルウインターフェア


  日程の後半はメインイベントであるロイヤルの視察です。ロイヤルの会場はトロント市の中心街から車で20分程度離れたオンタリオ湖の湖畔にあります。東京ドーム10個以上の大きさを誇る会場ではホルスタインのショウ以外にも豚や鳥など数え切れないくらいの家畜や家禽の審査、様々な畜産物や農作物の物販ブースがあり、見て回るだけでも数日掛かってしまうような規模でした。
 ホルスタインショウの会場はカナダの国技であるアイスホッケー場、場内で一番の設備・規模を誇るリングです。前年までは日本のリコーがスポンサーでしたが、今年からはコカ・コーラ社となりコカ・コーラスタジアムと呼ばれ、至る所でコークが販売されていました。前日までのスタジアムの主役は馬でウインター・フェアの1番人気だそうです。乗馬や馬車の競技など全国に生放送で配信され、大いに盛り上がっていました。
 一方のホルスタインでは未経産7部、経産9部で360頭を超えるエントリーがありました。審査員はニューヨーク州で酪農を営むジェイミーブラック氏でした。
 出品された牛たちは素晴らしいコンディションで未経産クラスでは未経産とは思えないサイズでありながらバランスの取れた体型、経産クラスでは体型のバランスがよく、肋の開張や乳房の形状・付着に優れた牛が多く出品されていました。
GCはAIMOGC
 グランドチャンピオンには視察牧場の1つであったジェイコブス牧場出品のJACOBS WINDBROOK AIMO(父:ウインドブルツク)が輝きました。並み居る強豪を退け、先月開催された全米最大の共進会ワールドディリーエキスポの4歳クラスチャンピオンから躍進しました。リザーブGCはそのエキスポでGCを獲得したJACOBS LAUTHORITY LOANA(父:ローソリテイ)でジェイコブス牧場の出品牛がワンツーに輝きました。前日の繋留所で見た2頭は乳房こそ調整されていませんでしたが、私でも注目するほどの体型でした。しかも、当日のリング内の彼女たちのコンディションは更に磨かれた最高の状態で他を圧巻していました。出品者の技量の高さに驚かされました。また、出品牛たちのレベル高さもさることながら、ショウの演出にも驚かされました。最終審査では会場のライトが消され、AIMOにスポットライトが照らされた際の割れんばかりの拍手は会場が一体となる盛り上がりを見せました。
 最後になりましが、今回の視察に参加する機会をいただき会員の皆様にお礼を申し上げます。このカナダでの経験を業務に活かし会員の皆様に少しでも還元していきたいと思います。
 
GCのAIMOとジェイコブスさん父娘
RAWFのFacebookより


インターミディエイトチャンピオン
(著者:向かって左から5番目)

平成31年01月20日

審査目の調和を目指す


-第13回世界審査委員 ワークショップ開催-

 このワークショップは、WHFF(世界ホルスタインフリージアン連盟)の体型審査部門における専門会議で、第1回を1990年イタリア・クレモナで開催して以来、2年に1度、各国を巡回し「国際的な遺伝評価統一のための体型審査手法の国際調整が必要」をテーマとして、その時々の審査全般に関する話題を協議している。各国の審査部長級担当者が一堂に集まり研修・協議した後、自国に持ち帰り、国内の審査委員にその結果について伝達徹底を図ることが目的。
イギリスに26ヵ国集合
 平成30年9月10〜12日イギリスのシフナルに世界26ヵ国46名が集まり、研究発表並びに農場での審査実務研修が開催された。日本からは日ホ協の池田泰男事業部長が参加した。
主な研究発表
@線形形質の進捗
 前回の第12回アルゼンチン(2016年)において、各国の相関が低い6形質を重点取組形質とした。「鋭角性」については肋の開張を60%、方向を40%に重みづけることが決定された。
A各国の相関関係
 前述のとおり、前回6形質を重点取組としたが、「胸幅」「蹄の角度」「後肢後望」「鋭角性」「乳房の懸垂」の5形質は現在も相関が低く、改善が必要。
B新しい調査項目の提案
 前肢の爪先(蹄尖)が外向し、膝が接近している牛が意外と多い事から「前肢の蹄の向き」(]脚)の状況について調査を始める国が出てきた(カナダ・ドイツ・オランダ・スイス等)。
Cスイスの審査委員
 2団体で19名の審査委員が所属しているが、全員が週2〜4日のパートタイマー。どの時間帯でも審査結果(評価)を同じにする為、朝8時と午後に同じ牛を審査し、ズレが無い様に目合わせを実施。実際受検農家には、訪問日だけで時間を伝えていない。
主な研究発表
 2農場で各国相関の低い線形形質を中心に、32頭の牛を使い、目合わせを実施。
次回開催
 次回開催は2020年3月23〜25日スイスのモントルーで開催予定。

世界各国の審査委員で集合写真
イギリス・シフナルにて


各国からの研究発表


供試牛を用いた目合わせ


一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan