平成30年07月20日

酪農家戸数・乳牛頭数減少に危機感

後継牛確保と長命連産性向上図る

−日本ホル協第68回総会−
 一般社団法人日本ホルスタイン登録協会(前田勉会長)の第68回通常総会が、6月15日、東京都中野区の中野サンプラザで開催され、報告事項として平成29年度事業概況並びに決算報告、平成30年度事業計画並びに収支予算、公益目的支出計画実施状況について確認され、任期満了に伴う役員改選などの議案すべてが原案通り可決承認された。
会長挨拶
 議事に先立ち、前田会長が開会挨拶を行い、会員並びに登録委員など酪農関係者をはじめ、日頃からご指導、ご支援をいただいている関係団体・機関、そして社員各位の多数の出席を賜り、盛会に開催できることに対し謝辞を述べた。
 はじめに、6月初旬に九州をはじめ西日本の広い地域を襲った台風7号並びに記録的な豪雨により各地で土砂崩れや河川の氾濫、道路寸断など人命に係る大きな被害があり、被害に遭われた方々に対し、心からお見舞いを申し上げ、1日も早い復旧対策が進められるよう祈念申し上げた。
 次に、酪農をめぐる情勢について「昨年の酪農業界は、子牛販売価格の好況と飼料価格の比較的安定供給に支えられ、経営面では比較的順調な1年であったが、国内の酪農家戸数や乳用牛頭数は引き続き減少傾向をたどり、その影響は乳牛資源の価格高騰に拍車をかけ、特に都府県酪農家では後継牛不足と将来への危機感を強めている。
 こうした状況の下、乳用後継牛確保のための性選別精液利用の普及率は年々高まっていて、最近では全国の乳用子牛生産頭数の半数以上を雌子牛が占めるまでになっており、当協会の血統登録においても性選別精液利用による登録割合は年々高くなり、昨年度の血統登録申込頭数は全国で20万7000頭を数え、前年を約6800頭上回る大幅な伸びを示した。会員並びに登録委員の皆様には改めてお礼を申し上げたい。
 当協会では本年度も、より多くの乳用後継牛の確保と併せて、経産牛の平均寿命や在籍年数を延ばすべく、長命連産性向上のための対策を強化していく。これには、本会事業である牛群審査による体型データ収集と受検農家への情報提供の強化を図るとともに、前年度に引き続き、(公財)全国競馬・畜産振興会からの助成を受けて[乳用牛DNA情報による長命連産性向上事業]を実施して、育成牛の体各部位測定、歩様等の肢蹄形質調査、歩様記録を持つ経産牛のSNP検査等から、長命連産性向上との遺伝的な関係を調査し、標準発育値の作成や肢蹄指数等の開発に努めます。」と述べた。
 また、「2020年に初のブロック開催となる第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会もあと2年3か月に迫っており、現在、実行委員会の絶大なるご協力と連携の下で、本格的な準備に入ってきたところです。また、参加都道府県出品割当頭数については本年11月に最終決定し、出品牛の選定準備へのご協力をお願いする運びとなります。
 来たる九州・沖縄全共が今後の全共開催の範となり、国産種雄牛の利用拡大と酪農生産意欲の向上、全国酪農家・関係者の親睦と絆がより深まることと、一般消費者に対する酪農理解醸成活動、九州・沖縄各県の特徴を生かした牛乳・乳製品や農畜産品の消費宣伝の場になることを期待し、当協会もその成功に向けて全力で準備を進めて参りますので、会員をはじめ、酪農関係各位の特段のご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」と述べた。
血統登録 109.5%増
 平成29年度事業実績では、会員数が都府県5572名、全国1万2122名で前年度から363名減少した。一方、血統登録申込は、全国20万7114頭の前年度対比103.4%の増加で都府県では前年度対比109.5%と大幅に増加した。
 審査成績証明申込は都府県で9733頭(前年度対比103.0%)、全国では2万6076頭(同100.3%)と増加を示している。検定成績証明申込が都府県で4341件(同100.9%)、全国では7万4444件(同99.0%)であった。また、SNP検査はLD一般の申込で都府県678件、全国では3554件(同142.2%)となった。
29年度決算
 平成29年度収支決算では、登録事業からなる実施事業会計、ホルスタイン会館賃貸事業のその他会計、そして法人会計を合わせた経常収益額は表より13億631万517円、同じく経常費用額は12億3669万3585円で、税引き後の正味財産増減額は6961万2932円の黒字となる旨上程され、原案通り可決承認された。

平成29年度正味財産増減計算書内訳表
30年度事業計画
 平成30年度収支予算については、血統登録申込が都府県で4万1910頭(前年度比103.0%)、全国でも20万410頭(同102.4%)、とし、経常収益は12億8268万7千円を見込む。
 昨年の酪農業界は、和牛受精卵やF1等の子牛販売価格の好況、飼料価格の比較的安定供給等に支えられ、経営面では比較的順調な1年であったが、国内の酪農家戸数や乳用牛頭数はなお減少傾向を呈し、昨年度は北海道を除くほとんどの都府県で生乳生産量が前年を下回った。乳用牛頭数の減少は乳牛資源の価格高騰につながり、特に都府県酪農家における後継牛不足に拍車をかけている。
 こうした状況下、乳用後継牛確保のための性選別精液利用の普及率は年々高まっており、最近では、全国の乳用子牛生産頭数の半数以上を雌子牛が占めるまでになった。  
 当協会では、より多くの乳用後継牛を登録に結びつけるため、安価で申込書不要の自動登録を推進し、強い近親交配の回避や遺伝病発現の防止、遺伝的能力評価計算の基礎ともなる正しい血縁の構築と情報提供を引き続き行っていく。
 また、前年度に引き続き、(公財)全国競馬・畜産振興会からの助成を受けて「乳用牛DNA情報による長命連産性向上事業」を実施し、育成牛の体各部位測定データの収集、歩様等の肢蹄関係データの収集、歩様データを持つ経産牛のSNPデータを収集して、長命連産性向上との遺伝的関係を調査するとともに、標準発育値や肢蹄指数等の開発に努める。

平成30年度正味財産増減計算書内訳表
日本ホル協70周年記念式典開催
 当協会創立70周年の記念式典を9月5日に中野サンプラザで開催する。また、2020年に、初のブロック全共として宮崎県都城市で開催する第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会に向けて、実行委員会との連携を密にして本格的な準備を進める。
 血統登録では、自動登録を主体に一層の推進を図るとともに、正確な登録を実施するために現場における出生子牛とその母牛の確認の徹底を図るほか、登録申請牛への親子判定抜取調査やSNP検査等における血縁チェックと血統疑義牛への親子判定調査の徹底を図る。
会長再任
 総会では任期満了に伴う役員改選があり、引き続き開催された理事会では会長、副会長、専務理事の選任が行われ再任された。
  • 会長
     前田 勉氏(長野県)
  • 副会長
     山口哲朗氏(北海道)
     清末健一氏(大分県)
  • 専務理事
     栗田純氏(学識経験者)
  • 理事
     小椋茂敏氏(北海道)
     山口秀雄氏(岩手県)
     安齋利勝氏(福島県)
     臼井 勉氏(栃木県)
     石原俊明氏(群馬県)
     長井竜也氏(富山県)
     鈴木康弘氏(愛知県)
     栗山勝行氏(兵庫県)
     川本正一郎氏(鳥取県)
     長恒泰治氏(岡山県)
     三瀬寿登氏(愛媛県)
     松島喜一氏(熊本県)
  • 監事
     千葉準一氏(青森県)
     橋秀行氏(千葉県)
     壹岐定憲氏(宮崎県)

第68回日本ホルスタイン登録協会通常総会
(6月15日中野サンプラザにて)
来賓祝辞
 日本ホルスタイン登録協会の第68回通常総会に来賓として臨席され、祝辞を述べられた方々とその概要は次のとおり。
「畜産クラウドの構築 農水省をあげて支援
第15回全共を 牛作りの理解醸成の場に」
農林水産省生産局 畜産部畜産振興課 春名竜也課長補佐
  家畜改良増殖法に基づき乳用牛の要であるホルスタインの審査・登録を担い、70年の長きにわたって不良形質の淘汰、有用なホルスタインの選抜に大きな役割を果たしてくれていることに農林水産省を代表して厚くお礼申し上げる。
 ご承知の通り我が国、生乳生産基盤の強化は喫緊の課題となっている。効率的な家畜の改良増殖を進めるとともに、性選別技術あるいは衛生管理、暑熱対策など適切な飼養管理などの普及定着を図っていきたい。また、関係機関の協力を得て畜産クラウドというデータベースの構築を検討しており、新しい取り組みを含めまして乳用牛の能力を最大限に発揮させる農林水産省をあげて支援したい。
 除籍産次が短くなっている中で丈夫で長持ちで健康な乳用牛作りというものが不可欠であり、正しい体型の牛の重要性を広めていただければと心からお願い申し上げる。再来年に宮崎県で開催予定されている全共がまさにそういう理解醸成にうってつけの場であると考えている。皆様のご尽力に感謝するとともに実りのあるイベントになるよう農林水産省としても精一杯応援させていただきたい。皆様が乳用牛の改良の先駆者として我が国の酪農に一層貢献されることをお願い申し上げる。
「『日本のホルスタイン』 継続的な取り組みに期待」
一般社団法人家畜改良事業団 守部公博専務理事
 当団は色々な仕事をさせて頂いておりますが、基本的に日本ホルスタイン登録協会との連携があり、この点につきまして日頃からの皆様方の取り組みについて厚くお礼申し上げる。酪農情勢につきましては、国内的には雌子牛の価格高騰が特に都府県酪農を直撃しており、家族経営を中心に酪農から離脱されている方が続いていることは残念である。29年度の登録件数は全国で20万件を超えていたということで、その中でも都府県の伸びが著しいと聞いている。血統登録は乳牛改良の基本で、最も欠かすことのできない取り組みであり、これが広まっていくということは当然ながら改良集団、改良の基になるところが拡大するということであり先の我が国の乳牛改良を考えるうえではかけがえのない財産であると思っている。
 最近出た雌子牛の生産予測によると、昨年度から雌子牛の出生頭数が増えており、今年度もまたそれを上回るペースで生産が見込めそうだ。背景にはメスの性比、これが前回よりも8%ぐらい上回っている。また、国の方で打ち出されたクラスター事業、これが27年度に本格稼働し、これらの成果が出始めている。当然ながら、皆様方の取り組みの賜物であると敬意を表する次第である。
 本年は日本ホルスタイン登録協会の70周年、節目の年であり、この70周年も社団法人としての歴史であるが、その前身組織を探ってみると優に100年を超える登録の歴史が日本にある。ヨーロッパでもだいたい1890年前後から登録を行っており、日本は決してそれに引けを取らない歴史を積み重ねてきている。そしてその登録を背景にした後代検定や牛群検定も半世紀に近い歴史、そして諸外国に引けを取らないしっかりした成果実績、これを残して今日に至っている。各国改良事業を実施しており、我が国日本もまた然りである。各国改良に力を入れるのにはそれぞれ理由がある。日本の例で言いますと、日本ホルスタイン登録協会の名前に入っている「日本ホルスタイン」、これを作るために改良事業を展開している。そういう中で皆様方の今後の継続的な取り組みに大いに期待している。
「生産減少に歯止めを 生産基盤の強化が課題」
一般社団法人全国酪農協会 馬瀬口弘志会長
(三国貢常務理事代読)
 本年度も重点事業として@血統登録は自動登録の推進を図り、牛群審査をはじめとした各種登録・証明の推進、Aゲノミック評価とSNP検査の普及に努め、遺伝的改良の推進を図る、B体型審査の普及と長命連産性に関連した事業の展開―などを推進していくと聞いている。
 特に近年、乳用牛のゲノミック評価については、主要国で急速に普及・進展しているが、貴協会はその普及推進に努めていることに対して心より敬意を表するものである。
 最近の酪農をめぐる情勢については、本年度より改正畜安法が施行されるなど、大きな節目を迎いる。生乳生産基盤の強化が近年の課題となっているが、中でも依然として生産減少に歯止めがかからない都府県の酪農対策が今年度は強く求められている。
 農政活動においては、貴協会を含めた酪農の友好団体が酪政連に結集して、政府・国会に様々な要請活動を展開してきたが、平成31年度の酪農政策に関しても、酪政連においては@後継牛確保対策A自給飼料対策B家畜排せつ物処理施設等対策C新規就農対策D経営安定対策について、現在、要請活動を展開中である。
 直近の酪農経営は、副産物価格の値上がり等があり、経営は回復してきているといるが、将来を見据えますと、基本は生乳生産できちんと再生産ができ、なおかつ将来に向けた投資が可能となる余剰が持てることが重要なことでる。
 貴協会と本会とは、機関紙「全酪新報」を会報としてご活用いただくとともに、「ホルスタイン牛の広場」として毎月、全国に改良の成果等を発信している。本会の酪農未来塾や視察研修事業などの運営にも御指導をいただいております。今後ともより一層の提携強化と友好を深めて参りたいと思っている所存である。


一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan