平成30年01月20日

ジャージーでカナダ視察

−ローヤル、国を挙げて盛大な家畜教育イベント−
 日本ジャージー登録協会(高村祝次会長)並びに全国ジャージー酪農振興協議会(加藤賢一委員長)は昨年11月7日から13日までの7日間、カナダ・トロント市内で開催されたローヤル・ウインター・フェアをメインに視察研修を行ったので紹介する。
 全国組織のジャージー関係団体で海外へ行くことは、今回初めての試みであった。北海道から11名、岡山県4名、熊本県3名、事務局1名、総勢19名の酪農家並びに関係者が参加し、、初日は牧場の視察、残り4日間はショウの視察、正味5日間の日程であった。
 牧場視察はホルスタイン、ジャージーの長い歴史のあるトロント郊外のブリーダーで、泌乳能力・体型成績の優れた、クオリティ牧場、プレザント・ヌック牧場、ブレンビー牧場、ブライドン牧場、スプルース・アベニュー牧場の5農場の視察を行った。
 また、ローヤル・ウインター・フェアはトロント市内の大規模パビリオンにおいて、様々な家畜品種の生体とチーズや皮製品など畜産物の展示や共進会が行われているイベントで、1922年にイギリス国王・ジョージ5世の時代に始まり、今回が95回目と、とても長い歴史である。
 フェアは約10日間の日程で行われ、平日は数十台のスクールバスが連なり、小・中学生が押し寄せる。また、休日は多くの家族連れが来場するなど、カナダの国策、農業のなかでも畜産業を教育する絶好の機会と捉えているからだと考えられる。
平成30年01月20日

歴史と先取りの精神

−牧場視察−
市街化の波
 クオリティ牧場は、ホルスタイン種のショウカウをメインとする歴史のある牧場で、83年と95年、09年の3度、ホルスタイン・マスター・ブリーダーの栄誉に浴している。「BC フランチスコ」、「ギブソン フィンスコ」、「ゴールドウィン フランスコ」の3世代が95点以上という成績はカナダ初である。
 牛舎はかなり前に建てられたニューヨークタイストールであるが、牛は良く手入れされ、高得点の牛ばかりなのが印象的。ローヤルにも数頭出品しているので、初産の分娩直後の牛が多かったが、前躯から後躯にかけての移行や、高さに見合った長さと幅のある牛が多く見受けられた。乳房は当然のこと良く揃っていた。現在は周辺を大規模な工業団地に囲まれている状況。種子でかなり手広く商売をしており、ローヤルショウにも協賛している。
実家で牧場継続
 2戸目のプレザント・ヌック牧場は、元はジャージー種のブリーダーであったが、エビイホルムから婿を迎えた事を機会に、ホルスタイン種も10頭ほど搾乳している。開拓時代を思わせる石造りの旧牛舎に、天井の高いフリーバーン牛舎を増築し、約60頭を搾乳している。ローヤルにもジャージー13頭を出品。
 当主のジュリー・エビイさんは06年に結婚したが、実家のプレザント・ヌック牧場を08年に廃業すると決めたとき、両親が牧場の継続を希望していたことから、クオータ(権利)を買い取り、牛も選り抜き、提供してもらった。
 ちなみに、泌乳能力の平均は、ホルスタイン10頭、乳量1,2963`、乳脂肪545`、蛋白406`。ジャージー40頭、乳量7,212`、乳脂肪387`、蛋白277`。審査成績は、ホルスタイン、2歳級VG(85〜89点)4頭、他VG2頭、EX(90点以上)5頭。ジャージー、2歳級VG10頭、2歳級GP(80〜84点)3頭、他VG10頭、EX19頭
 なお、当場婿さんは日本の機械メーカーKubotaの関連会社に勤務している。
連綿と続く歴史
 3戸目のブレンビー牧場は、ジャージーで17年にマスター・ブリーダーに選ばれている。案内をしてくれたジェイソン・ブッチャーの曽祖父ハロルド・ブッチャーが37年にベル・シティ牧場を興し、ジャージー飼育と牛乳加工をオンタリオ州ブラントフォードで始めた。その息子、祖父であるグラント・ブッチャーは兄のキース・ブッチャーと供に牧場を手伝ったが、その後、独立し、グランクレア・ジャージー牧場を始めた。
 グラントとクラリアン夫妻は7頭のジャージーから始めたが、40年間に250頭まで増頭。彼は同時に世界ジャージー協議会の終身会員として活躍し、オールアメリカンに25年以上出品。若い後継者達にも良い影響を与え、ローヤルにも継続して出品をしている。89年にはローヤルのジャージー出品ショウマンに対して、「グランクレア賞」を創設するに至っている。
 グラントの3人息子の一人、ブレント・ブッチャーはジェイソンの父に当たるが、79年にホルスタインのモナーク牧場で育ったベティと結婚。85年にオンタリオ州エアシャーに自分達の牧場を購入し、ブレンビー牧場と名付けた。その後、ローヤルにも継続して出品しており、03年と07年には「積極的なブリーダー」として賞を受けている。09年には「ブレンビー ギラー ザンブカ」EX95点―4Eで3歳級の第1位に選ばれ、オール・カナディアンに選奨された。2年後にはアメリカのデーリーエキスポで5歳級の上位に入賞している。
 ジェイソンは10年に85エーカーの敷地に牛舎施設一式を新築したが、オンタリオ州の農場でも最も高価な地域にある。乾草とコーンは購入、ヘイレージとコーンサイレージのみを自給している。繋ぎ牛舎で搾乳牛は75頭。泌乳成績は乳量7,905`、乳脂量431`、蛋白312`。審査成績はEX15頭、VG44頭、GP20頭。
ロボット搾乳へ切り替え
 4戸目はブライドン牧場で、当主ブライアン・セイルスは、3年前の北海道全共のジャージー交流会で講演を行ってくいただいた方だが、後述のスプルース・アベニュー牧場の長男で、64年に21歳で独立して牧場を開設した。ホルスタインでは「ブライドン アストロ ジェット」が一世を風靡した種雄牛であり、ジャージーでは「ブライドン リメイク コメリカ」や「ブライドン ジャマイカ」の精液が日本に輸入され、娘が数多く登録されている。
 86年と11年の2度、ジャージーでマスター・ブリーダーに、10年にはホルスタインでマスター・ブリーダーに選ばれている。約30年前に筆者が訪れたときは繋ぎ牛舎にホルスタインとジャージーがほぼ同数飼われていたが、3年前に牛舎改造し、フリーバーンとロボットパーラーを新設したのをきっかけに、ジャージー種のみに切り替えた。
 現在約100頭を搾乳しており、平均乳量は28`、乳脂肪率5.44%、蛋白率3.85%、牛群構成比は初産が32%で、3産以上が50%。ロボットパーラーでは平均で3.1回搾乳。繁殖成績は全体の受胎率が57%、初回受胎率が54%と良く、これは(※)コンポストバーンにしたことで発情発見が高まったことによる。

(※)休息エリアに堆肥を1m近く積み上げ一日数回撹拌するたフリーバーン牛舎の一種
真新しい牛舎
 最後に訪問したスプルース・アベニュー牧場は、32年にジャージーを飼い始めた歴史ある牧場。説明してくれたディーン・セイルス・ジュニアは5代目だが、ブライドン牧場のブライアンが叔父にあたる。
 耕地面積は750エーカー(303万u)で、17年6月に牛舎を新築したばかり。30b×100bの真新しい牛舎は内側全面が白いペンキで塗られ、天井が高いのが印象的。フリーストールと独房で仕切られ、パーラーは10頭ダブル。ホルスタインとジャージー合わせて250頭飼育し、搾乳は90頭前後。他に25,000千羽のブロイラーも飼育。いずれもそれなりの収支があるという。

平成30年01月20日

目を見張る正確なフレームと乳房

−ローヤル・ウインター・フェア−
 乳牛のショウでもアメリカのワールド・デーリィ・エキスポと双璧をなすローヤル・ウインター・フェアの乳牛部門のショウは、ホルスタインを筆頭にエアシャー、ジャージー、赤白ホルスタインの4部門で審査が行われる。また、最終日にはこの4部門のチャンピオン牛が一堂に会し、シュープリーム・チャンピオンが選ばれる。
 今回の視察研修ではエアシャーの除く3部門でショウを見る機会があった。
450頭をテキパキと
 ホルスタインは出品頭数が約450頭と多いことから、未経産の3部は「リング・オブ・エクセレンス」と名付けられた平場の審査場で11月9日の午後に、残りの未経産4部と経産はパビリオンでも最も収容頭数が多い「リコー・コロシアム」で翌10日に早朝から行われた。
 ジャッジはケベック州のピエール・ボーレット氏で、その姉メラニー・ボーレットさんがアソシエートを務めた。
 個体出品の部は、未経産は夏生まれ子牛(3〜5か月齢)を皮切りに子牛インターミディエイト級までの7部、経産は1歳級から始まり生涯乳量6万`超までの9部、加えて、未経産3頭1組の牛群クラスや経産牛3頭1組の牛群クラス、それに、ジュニアとインターミディエイト、シニアのチャンピオン決定と最後にグランドチャンピオン(GC)審査など、多種の仕事を非常にテキパキと指示し、序列を決めていく姿が印象的であった。50頭以上の出品頭数が多い部でも、平然とジャッジして回る姿や、限られた時間で終わらせるという使命が与えられており、この点は大いに参考になった。
 また、審査の合間には長年にわたり酪農業界に貢献してきた関係者を称える賞、例えば「オーナー・アワード」や「ハーズマン・アワード」などで、その都度、複数の方々が会場内に集まり、賞品が授与されたり記念撮影が行われたりと、受賞されたOBの方々が印象的であった。
 出品牛印象は、いずれも調教が良くされており大人しく、体型は骨格構造が正確で、特に乳用強健性に富む牛ばかりで歩様も確実であった。乳器については、分娩からの時期にもよるのか、当日の調整不足のものも散見されたが、前乳房の付着の強さと後乳房付着の高さ・幅、乳頭配置の正確さは特筆すべきであり、いずれの牛もベストアダーであり、チャンピオンにできると感じる牛が多数出品されていた。
 最終的なGS戦は、各部1位牛が揃い、リードマンはお揃いのTシャツを着て行われた。場内の演出も工夫されており、会場の照明が落とされた後、1頭毎にスポットライトが当たり、ポップ調の音楽が流され、観衆の拍手を誘った。
 ジャッジマンが幾度も牛の周囲を歩き回り、最後にGSを選んだあとは大歓声に包まれた。ホルスタインの部では4歳級3産目の「コーベイル デンプシー ディーナ 4270  ET」(父デンプシー:アメリカ・ミルクソースジェネティクス他の出品)が選ばれた。スタイリッシュで抜群の乳房であった。この牛は9月のエキスポでもリザーブグランドチャンピオンを受賞している。





ジャージー260頭出品
 ジャージーショウは、11日に「リング・オブ・エクセレンス」において早朝から午後3時過ぎまで行われた。
 ジャッジはオンタリオ州ブオーカーブレイ牧場のブレント・ウオーカー氏、アソシエートは弟のスコット・ウオーカー氏。ホルスタインを担当したピエール・ボーレット氏とは対照的に、淡々と審査し、講評をするところが印象的であった。最終的なGS戦でも牛に近づくことなく、遠くから牛の名前を呼び、「文句なしにこの牛が良い」と講評するのが逆の意味で好評であったようだ。
 出品は未経産6部、経産8部で、約260頭の個体出品があった。その他、ジュニア、インターミディエイト、シニアのチャンピオン戦があった。さらに牧場牛群に加えて、色々な関係者へ「ジャージーの振興のための賞」を設けており、目録に掲載されているだけでも30点以上。各部が終了する度に賞品授与セレモニーが行われていた。
 最終的なGS戦は、ホルスタインと同様に各部の1位牛が、リードマンに揃いのTシャツを着せて行われた。演出も同様であり、これは一般観衆がショウ会場に大勢居ることから、消費者を意識した工夫だと考えられる。
 最終的なGCは7歳5産目の「マスキー イアトーラ マーサ」(父イアトーラ:アメリカ・ミルクソースジェネティクス出品)が選ばれた。大柄な牛ではないが、スタイリッシュで乳用性に極めて優れ、抜群の乳房であった。この牛は9月のエキスポでもGSを受賞している。
 その後、同日の夕刻、エアシャーと赤白ホルスタイン、ホルスタイン、ジャージーの4品種のチャンピオンが一堂に集まり、シュープリーム・チャンピオン戦が行われた。審査はそれぞれのジャッジマンが集まり協議し、最終決定はホルスタイン担当のピエール氏。ジャージー種の「マーサ」が見事選ばれ、3年連続の快挙である。

 最後になるが、今回の視察では勿論牛を中心に研修を行ったが、「牛は草食動物であり、粗飼料を十分に食べてこそ、その能力を発揮できる」ということを再認識させられた。牧場視察であってもショウの会場であっても、カナダの石灰岩土壌で育ったアルファルファの乾草が十分に与えられ、それを飽食している。当然のことながら、正確な骨格構造をしており、その下にある乳房は上から下まで幅がある。
 斜め後ろから後肋を見ると、西洋梨型のような下腹部ではなく、上部から肋が張り出したリンゴ型の肋腹を呈している。オンタリオ州は乾燥地帯なので、アルファルファは刈り取ったら反転せず、畑で数日すれば乾草になり、ビッグベーラーで仕上げれば倉庫にうずたかく積んでおける。日本では真似のできないことだが、これこそが本来の牛の飼い方と感じた、5日間であった。
 末筆ながら、今回の視察研修にあっては、通訳はもとより、牧場視察の事前交渉やホテルの手配など、北海道帯広市の株式会社十勝畜産貿易には大変お世話になり、スムーズな日程をこなすことが出来た。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。


一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan