平成29年07月20日

酪農家戸数、乳牛頭数に危機感
体型審査やSNP活用で耐用年数向上図る

−日本ホル協 第67回通常総会−
 一般社団法人日本ホルスタイン登録協会(前田勉会長)の第67回通常総会が、6月23日、東京都中野区の中野サンプラザで開催され、報告事項として平成28年度事業概況、平成29年度事業計画並びに収支予算、公益目的支出計画実施状況について確認され、提出議案の平成28年度決算報告、平成29年度役員報酬などの議案全てが原案通り可決承認された。
会長挨拶
 議事に先立ち、前田会長が開会挨拶を行い、農林水産省をはじめ、日頃からご指導、ご支援いただいている関係団体・機関、そして社員各位の多数の出席を賜り、盛会に開催できることに謝辞を述べた。
 酪農をめぐる情勢については、「依然として、酪農家戸数と乳牛飼養頭数は減少の途をたどり、全国の生乳生産量も昨年9月以降、連続しての減少傾向が続いています。最近発表された畜産統計(平成29年2月現在)によれば、全国の酪農家戸数は1万6,400戸で前年同期に比べて600戸減、乳牛飼養頭数は132万3,000頭で2万2,000頭減少し、平成15年以降15年連続の減少となっています。また、10年前と比べても約1万戸の酪農家と31万頭の乳牛がいなくなったことになり、酪農の将来を考えると、大きな危機感を感じざるを得ません。当協会の主幹事業である登録等頭数でも、平成28年度都府県における血統登録申込が4万2,102頭で前年度対比95%、会員申込は5,643名で94%、以下、移動証明77%、審査成績証明91%、検定成績証明83%と軒並み減少しており、酪農家戸数や乳牛飼養頭数の減少が即、登録等頭数にも影響しています。平成29年度も酪農情勢はなお厳しいものがありますが、国では畜産クラスター事業の拡充等、酪農生産基盤強化のための種々対策が講じられています。また、全国連等の酪農関係団体では若齢預託牧場の設置等による哺育・育成体制の強化や、各都道府県内の酪農組合等でも、性選別精液利用や後継牛保留に対する助成等、乳用後継牛の確保に尽力されています。
 当協会でも、国の家畜改良増殖目標に沿って、遺伝的改良面から酪農経営の向上に寄与するため、引き続き自動登録を推進するとともに、長持ちし、かつ生涯乳量の高い牛群を確保するため、長命連産性や生涯生産性に関係した乳器や肢蹄の改良を推進して参ります。その一例として、平成29年度から3年間、JRL畜産振興事業で「乳用牛DNA情報による長命連産性向上事業」を受託し、体型審査やSNPデータを活用して、標準発育値の作成や体のサイズ指数、歩様を含む肢蹄形質の指数を開発し、これを現場に応用して、乳用牛の耐用年数の向上に努めます。」と述べた。
 最後に、当協会最大の事業である全共については、「初のブロック全共として、平成32年10月31日から3日間、宮崎県の都城地域家畜市場において「第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会」を開催します。本年10月には実行委員会を設立して、九州・沖縄各県の行政並びに酪農関係団体等、多くの皆様からの支援協力を仰ぎながら、開催基本計画の策定と具体的な準備に取り組んで参ります。
 来る九州・沖縄全共が今後の全共開催の範となり、国産種雄牛の利用拡大と酪農生産意欲の向上、全国酪農家・関係者の親睦と絆がより深まることと、一般消費者に対する酪農理解醸成活動、九州・沖縄各県の特徴を生かした牛乳・乳製品の消費宣伝の場になることを期待し、当協会もその成功に向けて全力で準備を進める所存です。」と述べた。
SNP検査 前年比169.3%
 平成28年度事業実績では、会員数が都府県5,643名、全国1万2,485名で前年度から539名減少した。一方、血統登録申込では、全国20万350頭の前年度対比99.8%で微減であったが、都府県では前年度対比95.1%と減少した。
 審査成績証明が都府県で1万7,446頭、全国では4万8,212頭(前年度対比92.8%)と減少したが、これは体型調査の事業費の減少による。検定成績証明が都府県で4,304件、全国で7万5,166件(同98.0%)であった。また、SNP検査は都府県650件、全国で2,784件(同169.3%)と大きな伸びを示した。
 平成28年度収支決算では、登録事業からなる実施事業会計、ホルスタイン会館賃貸事業会計、法人会計を合わせた経常収益額は12億3471万190円、同じく経常費用額は11億6458万1596円で、税引き後の正味財産増減額は5010万394円の黒字となる旨上程され、原案通り可決承認された。
29年度事業計画
 平成29年度事業計画では、酪農家戸数、乳牛頭数の減少が続き、生乳生産量も前年割れの状況が続いている。加えて、乳用後継牛の減少に伴い、乳牛資源の価格が高騰している。国では、酪農生産基盤強化のため、畜産クラスター事業、楽酪事業などを核として、乳用牛能力向上対策や後継牛確保など、種々の対策を展開している。
 こうした状況を踏まえ、日本ホル協では国の指導に基づき遺伝改良面から酪農経営の向上に貢献するため、登録事業を基盤として、特に長命連産や生涯生産に関係した乳器や肢蹄の改良を推進することで、長持ちで生涯乳量の高い牛群を確保できるよう引き続き努力を傾注して行くこととした。
 また、平成32年には初のブロック全共として、第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会を宮崎県都城市で開催する。本年10月には、実行委員会を設立し、大会成功に向けて本格的な準備を進めていく。
 血統登録は、自動登録を主体に一層の推進を図るとともに、正確な登録を実施するため出生子牛と両親の確認などの徹底を図る。SNP検査では、その普及に努め遺伝的改良の推進を図る。
 血統登録、審査・検定等で収集した情報を適正に維持・管理するとともに、近親交配を避ける近交係数の算出や系統譜の利用、遺伝評価値の活用等を目的に、Webサイトや機関紙を通じて、これを提供していく。
 後代検定に必要な初産検定中の材料娘牛とその同期牛の体型データの収集を今年も2万2千頭余行う。また、これらのデータや登録情報を基に、国等から受託を受けて、総合指数の見直しや泌乳能力及び体型の遺伝評価に必要な血縁ファイルの作成等を行う。
 (公財)全国競馬・畜産振興会の助成による「乳用牛DNA情報による長命連産性向上事業」を実施し、歩様形質を含めた体型データを今年は4千頭を収集し、そのうちSNP検査を600頭行う。また、標準発育値作成のため、のべ500頭の測定も行う。
 世界ホルスタイン・フリージアン連盟に加盟し、登録に係るゲノミック技術、近親交配による弊害、繁殖障害などの共通課題について情報交換を行う。
 ホルスタイン会館の運営を通じて、登録事業の安定的な運営を図り、事業の継続性を高めていく。
 平成29年度収支予算は、血統登録申込が都府県で4万700頭(前年度予算対比95.0%)、全国では19万5700頭(同100.1%)、審査4万9,510頭、検定7万3,720件、移動5,900件を計画、ホルスタイン会館賃貸事業は前年度並みの収益を予想し、経常収益は12億1379万8000円を見込む。経常費用は11億8937万9000円とし、税引き後の正味財産増減額は576万9000円を見込む。
「来賓祝辞」
 日本ホルスタイン登録協会の第67回通常総会に来賓として臨席され、祝辞を述べられた方々とその概要は次のとおり。
「新たな事業『楽酪事業』は労働条件の改善」
農林水産省生産局畜産部畜産振興課 松本隆志課長補佐
 はじめに日・EU関係について様々な新聞報道が報じられていて将来にわたって不安を感じているかと思う。農水省としてはTPPで合意した内容が最大限譲歩したものであり、日・EU交渉もTPPラインを基準に担当者が懸命に交渉を続けていると聞いている。
 酪農生産基盤の強化として、農水省では畜産クラスター事業の他、今年度から新たに酪農経営体生産性向上緊急対策事業(楽酪事業)という新たな事業を始めた。これは酪農家の労働条件の改善を目標とし、基本的には機械の導入がメインになっているが、搾乳ロボットをはじめ自動給餌器も補助対象となっている。これは、機械導入による省力化で後継者の確保や、初妊牛を購入せずに済むように自分で雌牛を作る、育てる時間を作るといった大きな意味合いもある。
 国としては国際化に対応することが大きなポイントになるが、一方で酪農の生産基盤の強化への対策をどのように行ってくのかということを地域の中で引き続き考えていただくことが最終的な国際化対応に繋がっていくと考えているので、そのために事業を活用していただくようお願いする。
「牛検305日乳量 過去最高9,601kg」
一般社団法人家畜改良事業団 高橋勉理事
 当団が実施している改良事業はじめ種々事業につきましては、皆様方からの日頃よりの万般にわたるご支援、ご協力を賜っておりますことを厚く感謝する次第である。先般、とりまとめが終了した28年度牛群検定成績速報から特徴的なトピックスを3点紹介させていただく。
 1つ目は305日乳量が全国で9,601kgと過去最高となったことである。北海道の乳量が12年ぶりに都府県の能力を上回り、昨年よりも195kg増え、都府県では63`増に留まった。熊本県や近隣で発生した地震や夏以降の大雨等の影響を受けたと思うが、都府県牛の伸び悩みが顕著であった。
 2つ目は分娩間隔で、北海道では年々短縮傾向で1日短縮の426日に対し、都府県では1日増え444日になった。
 3つ目は産子の性比についてである。性選別精液の利用が多いことから雌の生産率が高まっている。これは安定して利用されている結果で、懸念をしていた受胎率に影響が出ていないと受け止めている。
 需給見通しでは、需要は堅調であるが、供給面においては昨年を下回り、関係者も生乳不足に危機感を募らせている。特に都府県の減少に対して回復の兆しが見られない。これは離農による飼養頭数の減少と個体の能力の伸び悩みと推察している。
 改良の第一歩は正確な記録を取ることから始まる。その記録の根幹は血統登録と牛群検定であり、車の両輪だと受け止めている。当団も引き続き日本ホル協と共に手を携えながら生産者、また我が国の乳牛改良のために尽力する。
「生乳生産量 夏の不足が懸念」
一般社団法人全国酪農協会 馬瀬口弘志会長(三国貢常務理事代読)
 最近の酪農情勢は今、大きな転換点を迎えている。生乳生産については依然として酪農家戸数、飼養頭数の減少により生産基盤の弱体化が大きな問題となっている。平成15〜26年度までの12年間に生乳生産量は北海道が4万d減に対して、都府県は実に103万tもの生産量が減少している。この夏の生産不足が大変懸念されるなど生産基盤対策が急務である。
 最近の酪農経営は個体販売や肉用子牛価格の高騰により回復してきていると言われるが、将来を見据えると、基本は生乳生産であり、これでしっかりした酪農経営が可能になる。しかし、現状は国内生産が回復しないため乳製品の恒常的な輸入依存が続き、このまま手を拱いていれば、政府の酪肉基本方針である生乳生産目標750万tという値は遠のくばかりで、是非とも皆様のご尽力によって生産減少に歯止めをかけていただきたい。
 昨年4月の熊本地震では、日本ホル協を始め全酪連、酪政連、当協会からなる友好4団体で災害対策酪農団体協議会を組織し、被災地の酪農家の皆様方に義援金の贈呈が出来たことは大変有意義なことであった。
 貴協会とは当協会機関紙「全酪新報」を会報としてご活用いただき「ホルスタイン牛の広場」として毎月、全国に改良の成果等を発信している。また、本会の酪農未来塾や視察研修事業などの運営にも委員としてご指導いただいている。今後ともより一層の提携強化と友好を深めて参りたいと思っている所存である。

平成29年07月20日

今後の行事

−日本ホル協−
◇地区別登録委員研修会・夏期登録事務担当者会議
◎東北地区=7月31日、8月1日=青森県
◎関東地区=8月10日、東京都、日ホ会議室(事務担当者会議のみ)
◎中部・北陸地区=7月27・28日=富山県
◎近畿地区=7月24・25日=京都府
◎中国・四国地区=8月3・4日=岡山県
◎九州地区=7月20・21日=福岡県
◇中央審査研究会
9月20〜22日 北海道江別市、酪農学園大学
◇第15全共実行委員会設立総会
10月12日 宮崎観光ホテル
◇中間監査会
10月20日 日ホ会議室
◇第288回理事会
11月22日 日ホ会議室
◇東西社員会議・冬期登録事務担当者会議
平成30年1・2月頃

平成29年07月20日

人事異動

−日本ホル協−
(6月30日付)
◇三寺克志 退職(総務部総務課長兼経理課長)
(7月1日付)
◇渥美 正 総務部長[総務課長兼経理課長]兼調査部長 
(総務部長兼調査部長)


一般社団法人 日本ホルスタイン登録協会
The Holstein Cattle Association of Japan